あなたが私の立場だったら、どう思うか考えて。
ウクライナ国民が世界に呼びかけたいことは、この一文に集約される。テニスプレーヤーもしかりだ。
1月19日、
全豪オープンの会見場「インタビュールーム3」に入ってきたレシア・ツレンコ(34)=
ウクライナ=は想像していたより、さっぱりした表情だった。
女子シングルス3回戦で、世界ランキング2位のアリーナ・サバレンカ(25)=
ベラルーシ=から1ゲームも奪えなかった。あまりの完敗だからか、逆にすっきり消化できたのかもしれない。
拡大する1月19日、全豪オープン女子シングルス3回戦で敗れたツレンコ(左)は、対戦相手のサバレンカとは握手を交わさなかった=ロイター
ツレンコにとって
ベラルーシは、母国を攻撃するロシアの協力国だ。
昨年3月の
BNPパリバ・オープンではサバレンカとの対戦を棄権した。
後日、その理由を明かした。大会開幕後、
女子テニス協会(
WTA)の上層部に対し、ロシア、
ベラルーシ選手に「中立資格」でのツアー出場を容認するのはおかしいと訴えたという。しかし、納得のいく回答は得られなかった。
そのやりとりがサバレンカとの試合直前に脳裏によみがえり、「パニックで呼吸困難になった。精神的に打ちのめされ、コートに出ることができなかった」。
それから約10カ月後、コートで打ち合いはしたが、試合後の握手はなかった。
まだ、握手を交わすのは難しい?
インタビュールーム3での会見で聞かれた。
「私たちの国は今、戦争の真っ最中だから、(握手をしないのは)正しいことだと思う。説明は難しいけれど、私の気持ちを感じてもらうしかない。感じられたら、私にその質問はしないはず」
質問は続いた。昨年の全豪では
ウクライナへの募金活動が大々的に行われ、注目度も高かった。今も戦況は改善していないのに、関心は薄まっていると感じるか?
「そう感じる。人々は戦争について話したくない。悪いニュースを耳にしたくない。私が
SNSで何か発言すると、それを迷惑がる人たちから悪意あるメッセージが山ほど届く。ただ、私はこの舞台で世界に知らせないといけない」
ツレンコの訴えを聞きながら、2022年夏の
ウィンブルドン選手権を思い起こしていた。
2回戦で同郷のアンヘリナ・カ…
<引用元>http://www.asahi.com/articles/ASS3C54Y9S31ULZU004.html?iref=pc_spo_tennis_list_n