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全米テニス参加の夢かなえた邦人留学生 狭き門に合格

 8日に閉幕したテニスの全米オープン。前年女王の大坂なおみ、同4強入りした男子の錦織圭(ともに日清食品)は今年、ともに8強に残れず、大会を後にした。そんな中、終盤まで大会公式ホームページの練習スケジュール欄に名前を刻んだ日本人がいた。「HARU INOUE」。4大大会のひのき舞台の雰囲気を満喫した若者の挑戦は、夢の扉を自ら押し開く尊さを教えてくれる。  彼の存在に気づいたのは、ロジャー・フェデラー(スイス)、セリーナ・ウィリアムズ(米)も汗を流す練習コートにいたときだった。黒髪の170センチほどの青年が女子選手と打ち合っていた。時間表で名前を確認すると、国名に「JPN」とある。しかし、出場選手のリストにはない。  井上晴さん(23)は大会を主催する米国テニス協会が選抜する公式のヒッティングパートナー(練習相手)として参加していた。  4年前の夏から米カンザス州のウィチタ州立大に籍を置く。大学の元チームメートが全米オープンのヒッティングパートナーをした経験があることを知り、大学のコーチに相談して推薦状を書いてもらった。さらに、国際テニス連盟(ITF)主催大会での実績などを記し、自ら米国協会に直訴。熱意が認められ、10人ほどの狭き門に合格した。  東京都町田市出身。日本の高校に通っていた3年の夏、進路に迷っていた。「このまま日本の大学に進むか、それとも米国をめざすか」。英語は得意でもなかったが、大好きなテニスでうまくなるには米国の環境が近道だと決意し、猛勉強で留学をかなえた。  「あのとき、日本にとどまっていたら世界のトップ選手と球を打ち合う機会なんてなかったでしょうね」と井上さんは振り返る。  今大会は、今年の全仏を制した女子の元世界1位のアシュリー・バーティ(豪)、男子で準優勝したダニル・メドベージェフ(ロシア)、ベスト4のマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)らをはじめ、3回戦当日に錦織圭の相手も務めた。誰と練習するかは、前日に大会主催者から連絡されるほか、選手側からのリクエストもあるという。一日のうち、多いときは4人の相手を務めた。  「錦織選手と打つことになると知ったときは、やはりうれしかったですね。強く印象に残るのはベレッティーニのパワー。打球がものすごく重く感じた」  来年5月の大学卒業後の進路はまだ決めていない。プロ選手として生きていくことの過酷さ、レベルの高さは今夏、肌で感じた。「日本に帰るか、米国に残るかも含めてこれから考えます」。自ら志願してつかみとった全米オープン参加の経験は、今後の人生を切り開く支えになるはずだ。(ニューヨーク=稲垣康介) <引用元>http://www.asahi.com/articles/ASM9B3GBLM9BULZU008.html