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同情論?逆効果? セリーナ「性差別」発言、尽きぬ論点

 大坂なおみ日清食品)が6―2、6―4で初優勝を飾ったテニスの全米オープン女子シングルス決勝で、主審を「泥棒」と呼ぶなどの違反行為で3度のペナルティーを受けたセリーナ・ウィリアムズ(米)が、主審の判定を「性差別」と非難した。黒人女性は米国社会で弱者とされるが、S・ウィリアムズは大スターという強い立場もあり、論点が尽きない。  S・ウィリアムズのコーチは違反行為をしたと認め、国際テニス連盟(ITF)も主審の判定や試合運営を「ルール通り」と全面的に支持している。  それでも4大大会シングルス12度優勝の名選手で、女子テニス協会(WTA)の創立に関わったキング氏は主審を批判。ロイター通信によると、S・ウィリアムズに対し、主審はもっと丁寧なコミュニケーションができたはずだと主張した。AFP通信によると、今大会の男子シングルスで優勝したノバク・ジョコビッチセルビア)も「審判は選手を追い詰めるべきではない」と述べた。今回の主審が、他の試合でも厳格にペナルティーを科してきた経緯が念頭にあるようだ。

「抗議で自分が乱れた」

 女性スポーツに詳しい山口香・筑波大大学院教授(スポーツマネジメント)は、抗議を試合の一部ととらえてこう見た。「審判への抗議で流れを有利に変えられることもあるが、今回は抗議で自分が乱れた。しない方がよかった」  09年全米準決勝でS・ウィリアムズがキム・クライシュテルス(ベルギー)に敗れた時、相手のマッチポイントで線審に暴言を浴びせ、最後のポイントをペナルティーで失った。当時、負けを受け入れたくないための「言い訳」という批判もあった。  山口教授はスポーツから性差別をなくす必要性には同意見だが、主張の仕方として否定的だ。「正しい判定に納得がいかず暴言に至った。負けた後に性差別だと言い出したのは論点のすり替えで、自己弁護のために性差別を持ち出すのはよくない。ずるいと思われ、差別を助長する」

米社会はセリーナ寄り目立つ

 当日の会場を含め米社会にS・ウィリアムズ寄りの反応が目立ったのは、黒人や女性に対する差別に敏感な米社会の世論を背景に、「かわいそう」という感情に傾いた人が多かったからではないかと分析した。  WTAには1970年の創立以来、男女同権を実現してきた歴史がある。今回の決勝についてWTAは「選手の感情表現に対する許容基準が男女で異なってはならないと信じ、全ての選手が等しく扱われるよう努力してきたが、昨夜(の決勝)はそうなっていなかった」という見解を発表した。  全米、全仏、ウィンブルドンの女子ダブルスで優勝した杉山愛さんは「4大大会の賞金を男女同額にしただけでなく、試合会場にはコーチや選手のための託児所がある。やりがいのある舞台を作ってくれたWTAの方針に私も協力し、連帯を示すTシャツで記者会見に出たこともある」。

杉山さん「感情は理解」

 杉山さんは今回は主審の判定が正しく、差別を訴える機会としても適切でなかったと考えるが、S・ウィリアムズの感情は理解できるという。  「私がプロになりたての頃、観客に応援されるのはいつも相手選手だと思っていた。非白人の選手は同じような経験を経て、勝つことで認められ、活躍してファンに応援してもらえるようになり、タイトルを取って発言力を獲得する。S・ウィリアムズの主張の強さには、そういう背景があることも知って欲しい」(忠鉢信一

S・ウィリアムズの抗議の経緯

 【警告①】第2セット途中、S・ウィリアムズのコーチが身ぶりでアドバイスしたことに対し、主審が最初の警告。  【警告②+1ポイントペナルティー】「アドバイスは見ていない」と抗議した後、ラケットをコートにたたきつけて壊した。  【警告③+1ゲームペナルティー】1ポイントのペナルティーに抗議し、「ポイントを盗んだ泥棒」などと主審に暴言。  【記者会見】試合後、「男子が審判を『泥棒』と呼んでも1ゲームペナルティーにならない。私は女性のために戦う」と主張。  翌日、1万7千ドル(約189万円)の罰金を科された。 <引用元>http://www.asahi.com/articles/ASL9G0C50L9FUTQP02J.html